NO,123 田んぼ通信 平成16・12・15

 今年も残すところ、2週間あまり。年末だと言うのに そんな気分が湧きません。
今年の晩秋から初冬にかけて、異常すぎるほど暖かすぎます。
例年 今頃の季節は、小雪がちらつき冬空の中をキャビン付きトラクターの有難さを実感しながら 田んぼの耕起作業等をしています。それが、今年はキャビンなしでOK。
もちろん、まだ初雪は降りませんし 霜でさえ数えるぐらいしか降らないのです。
秋の長雨で、大麦の播種作業が遅れて心配しましたが 適度な雨と思いもかけない暖かさで一気に挽回しました。 麦畑は、日増しに緑を増し、春先を思わせる生育状況です。 
今年の天気は、一年を通しておかしいです。 相次ぐ大型台風の上陸。夏場の異常高温。
しかも、大地震。自然災害の多い一年でした。
被災された方々には、心からお見舞い申しあげます。幸い、私の住んでいる地域は 秋の長雨の被害はあったものの 台風の直撃もなく無事に収穫を終えることが出来ました。
ただただ、自然の神様に心から感謝するだけです。
ところで、我が家では創刊当時から週刊誌「アエラ」を定期購読しています。先月末に興味ある記事が載ってました。
豪雨の田んぼでなぜ、死んだ。 ~11人の「水死」が示す日本の深層~ 
ライターは、長谷川 煕さん。長谷川さんの記事は、いつも楽しみにしています。
 相次ぐ大型台風の上陸。 その度に報道された高齢者の水死。 私も、日本の米づくりの現状を象徴しているものだと 気になっていました。
「反、畝単位の狭小の田を「一所懸命」で守る習わし。」
「田んぼは減らせない」。「行くなと言っても・・・」
こんな小見出しについ考えさせられます。長谷川さんによれば、今回なくなった人に共通する点が2つほどあるという。
ひとつは、「田んぼの様子を見て来る」こういって出かけ犠牲になった。しかも、耕作面積が8反とか3反の小規模稲作農家だった。
ふたつは、犠牲になった人たちは みんな几帳面な人たちだった。「一所懸命」にも磨きがかかっていた。
文章の最後をこう締めくくっています。
確かに、反、畝単位の面積も守ろうとする少なからざる農業者の「一所懸命」は、専業者への水田の集中、規模拡大を阻んではいる。稲作、農業の大規模化が日本のめざす方向としても、零細規模であろうと「一所懸命」に取り組んだ、日本の農業史、いや日本史を彩る心根そのものまでを失っては、大規模化も空洞化する。 そして、妻たちが証言する几帳面さは、日本人の真面目ではなかったのか。
私も、この記事を読むまでもなく、これまでの日本の稲作を支えてきたのは、昭和ひとケタの愚直なまでに田んぼに通い続けてきた親父さんたちの存在だったと実感しています。
また、ここ数十年高度経済成長以来の総兼業体制下での日本のコメ生産を可能にしたのも、昭和ひとケタの親父さんたちの存在です。
問題なのは、その先輩たちが年をおうごとに 農業の現場からリタイアしてきているという「現実」の中で、これから米づくりが続けられようとしていることです。
しかも、時代と共に日本人の意識構造も大きく変化しています。
 コメの生産構造も 大きく変わろうとしています。
「これまで日本の米づくりは、農業者が農外収入を米づくりに投入して維持してきたが、これからは、国民、納税者の一層の理解がなくては、維持していけないかもしれない・・・・。」と言った現在内閣官房で働いている中堅官僚の言葉を あらためて思い出されます。
そのためには、これからどの様な行動にでるか。
「多様性」を享受できるムラ社会の創出を本気で考える時期に来たといえます。
これまでのムラ社会は、「多様性」を排除することによって存在できたといえます。
昭和36年に制定された農業基本法は、「農業の近代化」とは名ばかり。つい最近まで農政は「多様性」を認めようとしない農政を展開してきたといえます。当然の如く、そこには「農業経営者」の存在は必要ではなかったのです。
例えば農協等の組織に結集し、同じ夢を追い求めることが個人の夢の実現につながった時代でした。 時代も「護送船団方式」の言葉に象徴されるような時代でしたから、農政も時代なりに展開したといえばそれまでですが・・・・・・。
これからの時代は、それを許してくれない時代に生きる。しかも、どんな自然災害に遭っても「百姓の来年」この想いを胸に 春になると田んぼに立つ。そんな、百姓の数は確実に減っていきます。農業者の努力によって維持されてきた日本の米づくりです。それが農業者の努力だけでは維持できない、生産構造の時代を生きなければならない。とすれば、「これからは、国民、納税者の一層の理解がなくては、維持していけないかもしれない・・・・」。という官僚の言葉が一つの道しるべならば、これまでの被害者意識構造に立脚した農政から、時代を積極的に受け入れ 多様性に富み活力ある農村地域社会へ変わることができる「農業環境整備」へと農政が変わることが望まれるのでしょう。
ムラ社会も時代なりに変わらなければ存続できない。
 これから数年 「農」の現場は、大きく変わります。私たち農業者の正義は、「食べ物を作り続ける」ことです。人が生きる限り「食糧生産を継続する」。その役割をこれからも担っていこうと思います。
「歴史上 農業そのものは、どんなに理屈をいっても、自然環境を破壊しながら生産拡大してきた。農業は「反自然的」行為だ。しかも、人間は他の生き物を食べて生きている。この現実のなかで全ての人が これからも生きていく。人間は食べなければ死ぬという現実こそ最も切実な問題だ」とは、国際連合大学副学長 安井 至氏の言葉です。 「環境保全農業」を近代化農法と対比させることによって、自らの農畜産物の付加価値として差別化を図り、生き残ろうとする農業者のウサン臭さを感じた一年でした。
それでは、どの様に生きるか。これは来年からの課題です。
年末にあたり、この1年 田んぼで考えてきた「農」への想いを整理するつもりでチョットだけ長く書きました。今年1年 私たちのお米とお付き合いしていただき ありがとうございました。        良いお年を!!


NO,122 田んぼ通信 平成16・11・16

 今朝も曇り空。天候が まったく変です。
農業を始めて、こんなに秋の長雨が続いた事は初めてです。
秋の彼岸以来2ヶ月余り、晴天が続かないのです。しかも、乾いた風がまったく吹かないのです。立冬が過ぎたというのに、霜が降った日は一日だけ。それも、薄っすらと弱い霜でした。もちろん、薄氷はまだ張りません。気温も高い日が続きこの時期としては、過ごしやすい日が続いているといえます。
しかし、この影響で農作物の生育および農作業に様々な影響が出てきました。
当地方の稲作は、秋の彼岸までに殆どの田んぼで収穫を終え 遅い品種および遅い田植えの稲を除いて、秋の長雨の影響を受けずに最高の出来で収穫を終えることが出来ました。
これから1年、最高の品質のお米をお届けできるとホット一安心したのもつかの間、彼岸過ぎから天気がおかしくなってきました。
生産調整で転作田に作った大豆が、長雨の影響を受けてしまいました。
今年の大豆作は、夏の好天候で近年になく最高の出来でした。今年は、大豆も大豊作と喜んでいた所に、秋の長雨です。
我が家では、2種類の大豆を栽培しています。納豆用の小粒大豆「コスズ」、豆腐や味噌に加工される普通大豆「あやこがね」です。特に、納豆用の小粒大豆に大きな影響が出ています。例年ですと、この時期殆どの畑で収穫を終えているのですが、長雨の影響で収穫作業が出来ないのです。
角田市管内で100ヘクタール以上の「コスズ」が作られていますが、まだ収穫が終わっていない圃場もたくさんあります。我が家でもこれから収穫予定です。すでに収穫を終えた小粒大豆を見た限りでは、とても検査に合格するような製品ではありません。
このままでは、角田市のコスズは壊滅的な被害を受けるでしょう。JA納豆工場も角田産小粒納豆の生産が出来なくなる可能性がでてきました。これまで、水害等の被害で生産量が減った事がありましたが 収穫皆無は経験ありません。
6月の種蒔きに始まり あついあつい夏の暑さの中を、中耕培土等の農作業を全て終え、今年は最高の出来栄え。あとは、収穫を待つだけ。と喜んでいたのに・・・。
この長雨で、これまでの努力がすっ飛んでしまいました。大豆収穫あとの同じ圃場に、大麦を蒔くのですがそれも大きく遅れました。来年への影響も出てきました。
努力しても 成果がゼロ。
これも、自然相手の農業ではこれまで幾度となく経験してきたことです。 それでも、新しい年になると圃場に立つ。人が生きる上で、必要不可欠な「食べ物」。人が生きている限り「誰か」が食べ物を作り続けるのでしょう。
 今年は、相次ぐ大型台風上陸。そして、大地震。大きな自然災害が日本列島を襲いました。それでも、食べ物が満ち溢れている日本の現実。 農業生産基盤が大きく揺らいでいます。 「誰」が日本農業を担うのでしょうか。


NO,121 田んぼ通信 平成16・10・17

 今年の稲刈りも、無事に終わることが出来ました。 
9月15日現在の作況指数 わが宮城県は、全国一位 108の「良」豊作です。 
品質的は、申し分ないお米に仕上がりました。昨年の大冷害では不本意なお米を届けることになり、稲作農家として悔しい思いをしました。今年は、天候にも恵まれ美味しいお米をお届けできホット一安心しているところです。
 作況指数「108」といえば、大豊作。村あげて豊穣の秋を喜ぶハズです。
しかし、現実は大きく違っています。 地域全体がひっそりとしています。
村で収穫されたお米の殆どは農協に出荷されます。その際、仮渡金と称して代金が支払われます。その価格が、大幅に下がったのです。「豊作貧乏」という言葉がありますがそんな雰囲気が村全体に漂っているのです。しかも、量的にもそんなに多く収量できた訳ではありません。 これは、当初から予想していた事ですからさほど気にしていません。
田植えする時から10アール当たり500キロ前後を目標に施肥設計しているからです。
今のお米の作り方は、美味しいお米を安定的に作る栽培方法に変わっています。今年のような天候の時は、多く肥料を効率的に施す事で多収穫が期待できます。特に、稲作後半に追肥をすることでより多収穫が可能となります。10年前までは、仲間と共に夢中になって多収穫技術を追求したものです。しかし、多くの肥料を施したお米は、マズクなります。
しかも、気候変動にも弱くなりがちです。現在の米作りは「安定した収量でより美味しいお米を!」  稲作の目標も時代と共に大きく変わってきているのです。
ところで、納得できないのが 生産者価格の大幅下落です。農協が示した仮渡価格は明らかに生産コストを無視した価格です。再生産可能な価格とは、程遠い価格を示し全量出荷を呼びかけるという矛盾に満ちた事業を展開しているのです。
どんな精神構造になっているのか、JA組織。確かに宮城県は、豊作かもしれません。しかし、全国的に見れば「101」の平年作。しかも、今年は度重なる台風の上陸で今月末に発表される最終作況指数がより下がる可能性が出てきました。
「豊作貧乏?」 また、ここ数年来のコメ消費量の減少等から来る30パーセントあまりの生産調整をしている現実。 「豊作でもない、しかも大幅に田んぼを休んでいる」
それなのにそれなのに、生産者価格の大幅下落。
いま、日本のコメどころ東北では、これまでの戦後コメ農政の矛盾が一気に噴出すかのように言い知れぬ将来への不安が漂っています。
 平成7年 戦後の日本の稲作システムが大きく変わり、市場原理の導入へ。しかし、遅々として進まなかった生産者、農業関係機関の意識改革。それを、黙認してきた農業政策。
今年から、また改正食糧法が施行されます。今年を含めて2~3年。稲作農家として生き残れるか真価が問われる時代が訪れようとしています。今月15日、NHK総合テレビ東北スペシャル「変わるコメ産地~生き残りへの模索~」へ出演のためNHK仙台放送局へ行ってきました。放送を通じて米づくりへの思いが大きく膨らみました。 後ほど機会があれば報告します。


NO,120 田んぼ通信 平成16・9・14

 今年も無事 新米を収穫する事が出来ました。
日頃お世話になっている皆様に 心から感謝を込めご報告いたします。

今年の新米は、例年以上にたくさんの想いがぎっしり詰まっています。
 昨年は、大冷害 必死の思いで田んぼに通ったものの、日照不足は、どうにもできず 本来のお米の味には程遠いものがありました。
米づくり百姓として 大変悔しい思いをしました。
今年の新米は、ピカピカに光ってます。
連日の真夏日。あの、暑い夏! お日様の光をタップリ浴び、元気に育ちました。
イネは、生き物。自然界の変化を確実に感じ正直に育ちます。
久々の自信作です。
早春から秋までお天道様と共に歩んだ お互いの日々に想いをよせ新米を一粒一粒 噛み締めて味わって下さい。
今年は、行政機関を中心に冷害対策と称して遅い田植えが叫ばれたものの、この夏の高温多照で一気に生育が早まりました。例年よりも10日ほど収穫作業が始まりです。
お天気相手の、百姓仕事。 その時々の、天候に合わせ最善の技術対策を施す。その為に、常にリスク管理を心がける。 そういう百姓がたくさん育つ環境を創り出す。
それが、農政の大きな役割ではないのか。改めて実感する日々です。
しかし、現実の農政、農業関係機関の意識は、組織の名の下に 「お決まりごと」を勝手に決めて、それに従わせるのが 「お仕事」 と思っています。考えてみれば、この構図の下で、何百年もの長い間 百姓は田んぼに通った、通わされた?
そこには、多様性を認めない閉鎖的な社会が残されています。
この意識を変えるのは、相当 根性が必要です。それでも、農政は新しい流れに確実に動いていくでしょう。僅かな、期待を込めてですが。
今年は、お彼岸まで、殆どの田んぼで 稲刈りが終わりそうです。
 こんなに早い稲刈りは、珍しいです。
しかも、今年は、例年以上に台風が多く発生しています。 
当地方には、「秋あげ半作」という諺があります。
自然界の「お空」の下にある限り 何が起こるか分からない。俵に入るまで油断できません。 無事に収穫が終わりますように、お天道様に手を合わせながら 田んぼに通う日々が続いています。
 ところで、今回の田んぼ通信で10周年目。新しい一歩のはじまりです。
お米の産直をはじめて 10年を過ぎました。この間、相変わらずお付き合いをいただいている 埼玉県内の福祉関係グループの皆様 本当にありがとうございました。 
皆様のお陰で 筆不精の私でも毎月一回 田んぼ通信を発行できました。
これからも、よろしくお付き合いを御願いします。
グローバル地域研究所 角田ファームスタッフ一同


NO,119 田んぼ通信 平成16・8・15

 今年の梅雨は、カラ梅雨でした。しかも、7月22日の梅雨明け以来 晴天高温の日が続き イネの生育が例年以上に早まりました。 7月中に殆どの田んぼが穂揃期を迎えました。珍しいことです。特に、8月に入ってからは 仙台でも連続真夏日14日という記録的な猛暑でした。
 昨年は、記録的な冷夏。今年は、一転して記録的な猛暑。 天候が変ですね。
 イネは、南国生まれ。昨年のような寒い夏は、似合いません。今年のような暑い夏こそ元気が出ます。 稲の花は、穂が出ると同時に 次々に咲きます。昨年の花は、弱々しいかったのですが、今年は違います。 お日様に向かって 力強く元気に咲き誇っていました。 出穂期になると花の香りが、田んぼいっぱいに広がります。
私のホームページでイネの花の香りが チョットした話題になりました。
 「イネの花の匂いってあるんですか?」とは、農業指導機関で働いている職員や農薬メーカーの稲作部門研究者から出た言葉です。そういえば、身近で田んぼを作っている農家でさえ分からない人がたくさんいる事に 改めてビックリ。
 稲の花の匂いは、「分からない」というよりも、「気付かない」人が殆どのようです。
 その気になって、意識して匂いを嗅がないと気付かないようです。
私にとっては、秋の収穫を確信する香りであり、生活と直結する匂いです。
 文才のない私ですから、どのように表現したらいいのか分かりません。
新米が炊き上がった時のような匂い、とでも言っておきましょう。
 昨年の冷害の時は、殆ど花の香りがしませんでした。低温の影響で、花粉が上手く出来なかったのが原因のようです。 今年は、稲の花粉が出来る大切な時期に天候に恵まれ無事に出穂し開花を迎えることが出来ました。
 例年以上に、甘い柔らかな匂いが、そよ風と共に広い田んぼから漂ってきます。
 稲の花は、午前9頃から咲き始め11時頃に盛んに咲き誇り午前中で殆ど開花が終わります。「玄米は、イネの果実」であるといわれます。
 花が咲き直ちに受精した子房は、発達して玄米になります。
 米粒を思い浮かべてください。受精した翌日から、子房は主として縦に伸び、5から6日後には米粒の長さが決まり、その後 米粒の幅が肥大し、最後に厚さが肥大します。
 この間、約45日。品種によって多少違いますが、積算温度で約九百℃~千℃の温度が必要だといわれています。高温の日が続けば登熟が早まりますが、今年の関東地方ような極端な高温が続くと品質に悪い影響がでます。 寒ければ寒いで心配し、暑ければ暑いで心配し、雨が降らなければ降らないで心配し、長雨が続くとこれまた心配になります。
 米づくりは、種籾準備からはじまり田んぼにイネがある限り、心配の種はつきません。
 今年の様に極端に天気が続くと、台風と秋の長雨が心配になってきます。
「上作の秋あげ下作」とは、過去に何度も経験したことです。
刈り取りが終わるまで、お天道様のご機嫌を伺いながらの作業が続きます。
9月10日過ぎには、刈り取り作業が始まる予定です。。 


NO,118 田んぼ通信 平成16・7・14

 今日は、朝から雨です。昨日、関東地方まで、梅雨明け宣言が出たものの、ここ数日、梅雨らしい天気が続いています。
  最近、「当たり前」「継続」「バランス」この言葉が妙に気になります。
6月はじめに梅雨入りして以来 数日前まで殆ど雨らしい雨が降らず、しかも高温晴天続きで畑はカラカラの状態でした。その影響で、6月15日以降に種蒔きした大豆は、極端に発芽が悪くなりました。 作物を育て収穫する為には、種を蒔き植えなければ話になりません。当たり前のことです。この「当たり前」のことを毎年々繰り返すのが農業という仕事なのでしょう。
 今年ほど、発芽という作業の難しさを思い知らされた年はありません。このことは、毎年感じていた事ですが、大豆の発芽は、たいへんデリケートなものだと改めて実感させられました。
 大地に種を蒔けば 芽を出し育つのが「当たり前」。この「当たり前」だと思っていた生命の誕生には、多くの複雑な要素が関係しています。
 作物の種が発芽する為には、水分と酸素が必要です。土の中の水分と酸素の関係は、相反する関係にあります。作物によってそのバランスが微妙に違います。しかも、同じ大豆でも小粒大豆と普通大豆では発芽の条件が微妙に違うようです。
 この相反する「水分」と「酸素」のバランスを良好に保つ為には、土の状態が大きく影響します。農業を語る時、最初に出てくる言葉が「土作り」ですがこれも、当然と言えば当然のことです。
 我が家では、大麦の刈り取り後に大豆を蒔く関係で、6月15日から種蒔き作業を始めました。晴天続きで作業そのものは順調に進んだのですが、肝心の大豆がカラカラ天気で発芽してきません。6月22日の台風に期待していたのですが、風だけで殆ど雨は降りませんでした。大豆畑は、もともと田んぼです。用水は、たっぷりあります。台風直後に思い切って、豆畑に一気に用水を流し込ました。イチカバチカの大きな賭けです。地域の人には、無謀な行為だと映ったようです。心配して、豆畑に水が入ってとワザワザ教えに来てくれた人がいたほどです。  結果は、大成功。上手く発芽が揃いました。
豆畑に水を入れて以来、毎日々畑の様子を注意深く観察する日々が続きました。 結論は、水を入れるタイミングと土の状態で発芽の良否が決まるということです。この、技術は結構こつが必要です。
 ところで、農業は 「観察能力」だ!という言葉を聞いた事があります。
農業も経営感覚が必要だ、どんぶり勘定では農業はやっていけない。
「農業も経営だ」私も、意識して口にしていますが、それでは農業経営を安定的に継続していくには何が一番大切かであります。最近よく耳にする言葉は、「マーケッテング」です。
しかし、農業経営を安定して継続する為の最大の要素は、作物を育てる「技術力」だと思っています。この「技術力」を育むのが「観察能力」でしょう。それでは、この「観察力」を生み出すのは何か。「日々の単純な農作業の繰り返し」「継続」だと思えてなりません。
これが、また難しいんですよね。私みたいな凡人には、まだまだ程遠いことですが。
 数日前までメチャクチャ忙しい日々が続きました。仕事は、もちろんの事、JICA稲作研修員の受け入れ、中学校職場研修の受け入れ、それにもまして、大切なたいせつな角田市長選挙。時代の流れを肌で感じつつ、現実の生活との「バランス」を如何に保って政治を進めていくか。 すべて「バランス感覚」が要求されます。
カラ梅雨で、暑いうえに 選挙で熱くなった頭でたくさんのことを学んだ一ヶ月でした。
(イネの生育は、カラ梅雨の影響で極めて順調、20日過ぎには穂が顔を出しそうです。)。 


NO,117 田んぼ通信 平成16・6・15

 今、朝3時50分。あたりは、すっかり明るくなっています。夕方の日没が午後7時。
 夜、8時ぐらいまで外の仕事ができます。 本当に昼の時間が長くなりました。
 今、一年で一番忙しい時期を迎えています。
 梅雨時の天気と大豆の種蒔き作業が重なっているからです。東北地方も7日に梅雨いりしました。梅雨入りと同時に梅雨空になりましたが、このところ梅雨の晴れ間が広がっています。 農作業は、お天気次第です。毎日 天気予報とニラメッコの作業が続いています。
 この通信を書いたら直ぐに豆畑へ直行です。
 今年は、大麦の収穫が予想よりも早まりました。5月末から今月初めにかけて晴天が続き、しかも高温と乾燥が重なったため 一気に収穫可能になったのです。我が家も、10日過ぎに刈り取り予定していたのですが、5日に刈り取りを始めました。しかも、例年 刈り取り初めの麦の水分は、30パーセント以上なのですが、なんと22パーセント前後。そのため刈り取り作業は一気に進みました。
 まだ調整作業はしていませんが作柄はあまり良くないようです。 これも、春先の極端な乾燥の天気が影響したようです。
 大麦の収穫直後の同じ圃場に大豆を蒔かなければなりません。農作物は、種蒔きの適期というものがあります。普通大豆は、今月初めが適期なのです。麦作の関係で今が種蒔き時期ですが、少しでも早く蒔かなければなりません。しかも、中途半端な作業で、雨が降ったら大幅に作業が遅れます。 作業が始まったら一気に種蒔きまで終わらせないと大変な事になってしまいます。 これまでの百姓仕事の中で、何度となく痛い目に遭ってきました。 天気にあわせて、やるときには寝ないでもやらなければなりません。
 「百姓仕事は、理屈はいらない。」田んぼや畑に どのくらい手数をかけることが出来るか。
より良い物を作りたい。その執念にも似た想いとそれを行動で示す事ができるかで、農作物の出来が決まるように思えてなりません。
 この頃、特にそのように思えるのです。
 昔から百姓の大先輩達が、口にしてきた言葉が少しずつ分かってきたようです。
 理屈を言う前に 体を動かせ。 これは、家の親父の口癖でもあります。
 ところで、5月末の集落の会合で先輩が、田んぼで見たことない生き物を見つけた。なんだろうといって ビンに入れて持ってきました。 先輩達も、見たことないと言って眺めていました。 なんと、カブトエビではありませんか。田んぼにたくさんいるというのです。2年前にもホームページで紹介した事がありましたが、今年は方々の田んぼで見かけられます。昨年は、気おつけて見ていたのですが見かけませんでした。 
 それが、今年は大繁殖しています。辞典によれば中部日本以南の田んぼに生息して、「田の草取り虫」と呼ばれていようです。どこから、やってきたか分かりませんが自然増殖しているということは、環境が変わってきた証拠です。地球温暖化が叫ばれていますが、生き物は正直です。明らかに地球温暖化は進んでいるのでしょう。 それと、農薬によって田んぼの生き物が少なくなっていましたが、ここ角田で取り組んできた 減農薬減化学肥料による稲の栽培が 田んぼの環境を確実に良くしている証しです。 田んぼの稲は、このところの 晴天で益々 順調に元気に育っています。 


NO,116 田んぼ通信 平成16・5・15

 今年の田植えも、無事12日に終わる事が出来ました。
 今年は、用水開始時期が10日ほど遅かったため 全般的に田植え作業も1週間ほど遅くれました。田植え期間を通して、一時強い風が吹いた日もあったものの、気温が高くいい田植えだったといえます。
 現在、田植え作業は機械化され 昔の手植え時代とは比べられないくらいに能率が上がります。 手植え時代は、それこそ夜が明けない暗い頃から苗代で苗取り作業をし、夕方までかかって大人一人で5アール植えれば一人前だったそうです。
それが、今では10アール(一反歩)植えるのに最新型田植え機では10分足らずで 済んでしまいます。
 それこそ、朝仕事から植えたら一日3ヘクタール以上の田植えが可能です。しかし、田植え機械の能力が いくら向上しても苗を続けるスタッフが揃っていないと能率が 上がりません。しかも、その場で育苗箱を洗うなど、その他の細かい作業も田植えと同時に済ませないと 後からの片付け作業が大変なことになります。
 昔から、田植え時期は「猫の手も借りたいほど 忙しい」と言われてきましたが、今でも同じです。
 今年、田植え機械を新しくしましたが10年前の機械に比べ、能率、操作性が格段に向上しました。その機械の能力を最大限に生かすには、機械のオペレーターの他に5人以上のスタッフが必要です。幸い、親戚のおじさん、おばさんが手伝いに来てくれますので、大いに助かりますが いずれも70歳前後。出来るだけ体に負担をかけないような作業体系を考えないと手伝いに来てもらえなくなります。また、今年は 用水開始時期が遅れたため、代掻き作業と田植え作業が例年以上に重なり、同時進行の作業が続きました。
 心配してか77歳になる親父が小型のトラクターで代掻き作業を手伝ってくれました。
 今年は、全部で15ヘクタールの田植えでしたが そのうち3分の1の面積の代掻作業をしてくれました。 77歳とは、思えない身のこなしでその辺の若者にはまだまだ、負けないくらいの仕事ぶりですが、あまり無理をさせてはいけないと思いつつ、つい甘えてしまいます。15ヘクタールの田植えを10日余りで植えましたが、親父の手伝いがなければまだ、田植え作業が終わっていないでしょう。
 家族、親戚そのほか、たくさんのお手伝いもらわないと終わりません。
田植え作業は、イネ作りで最大のイベントです。 稲のないところには、おコメは出来ません。この、当たり前の行為を何十年、何百年も続けて 日本人は生きてきたのでしょう。    ことしも、無事に田植えが終わった事に 心から感謝します。
 田植えの済んだ田んぼは、静かになりました。早く植えた田んぼでは、真っ白な新しい根が伸び、新しい葉っぱも伸びてきました。 一安心です。これからは、稲の持っている本来の力でたくましく育っていくでしょう。
 おいしいおコメを少しでもたくさん収穫できる事を信じ、秋の豊かな実りを夢見てこれから毎日田んぼに通います。 


NO,115 田んぼ通信 平成16・4・16

 ここ数日、気温変動の大きい日が続いています。一昨日は、23度を越える初夏の陽気。昨日は、一転して肌寒い冬のような一日でした。また、4月に入り雨が少なくカラカラに田んぼが乾いてきました。
 育苗ハウスの中では、5日に種まきした苗が順調に生育しています。緑のジュータン を敷き詰めたようです。桜も満開となりました。
 今年の春の農作業は、例年と比べて遅くなっています。
 私の地域の田んぼは、阿武隈川から大型ポンプで用水して地域内の田んぼに水が入る ようなシステムになっています。それを管理しているのが土地改良区という団体で す。土地改良区が組織決定と称して 例年よりも用水開始時期を10日ほど遅くする ことを早々と決めてしまいました。 田んぼに水が来ないのでは、田植えが出来ませ んので春の農作業も遅くせざるをえません。 田植え時期を遅くさせるために 用水 を遅らせる。 なんとも単純な発想。これまで日本の稲作がおかれていた状況を象徴 しているようです。
 昨年の冷害を教訓に 田植え時期を遅くするように行政機関の強い働きがけあったよ うです。
 私は、今回の決定には大きな疑問を持っています。今、日本の稲作農家に最も求め られている「自己責任」」の下に責任あるコメを生産する。生産者が責任あるコメ生 産ができる農業環境を創り出す。という時代の要請に逆行する「稲作経営者から経営 判断を奪う」時代錯誤も甚だしい暴挙に等しい行為だと思っています。
 田植え時期をいつにするかは、個々の稲作農家が それぞれの経営判断のもとに決め るべきだと考えます。
 今年に限っていえば、昨年の不作でH15年産が少なく超古米が混じった、決して美 味しいとはいえないおコメが一般スーパー等で売られています。今年こそ早植えして  おコメを食べていただいているお客様に一日も早く立派で美味しいおコメを届け る。 特に宮城県は、昨年の冷害でお客様に対して多くのご迷惑をかけてしまいまし た。ご迷惑をかけたぶん より一層の稲作技術を結集して一日も早く他産地よりも早 くおコメを届ける努力をする。今年 宮城の稲作農家に求められている大きな課題の ひとつです。
 確かに、5月の連休頃に田植えすると、7月中旬イネの生長で一番寒さに弱い時期に 低温(ヤマセ)に遭遇する確率が高くなります。遅植えすれば 生育ステージがずれ てそれを回避出来るかもしれません。 しかし、いつ低温がやってくるかは、誰 にも分かりません。しかも、生育が遅れて思わぬ被害に遭うこともあります。冷害対 策は、そんな単純なことではないことは、まともな農業技術者だったら理解している はずです。 行政当局に求められているのは、経営判断の出来る農業者の育成です。 その為には、農業者の意識改革以前に農政機関で働く職員の意識改革が最も求められ ているのでしょう。 生産現場で必要ない余計な仕事を創りだしながら自らの職場を 維持するという、愚かな構図はそろそろ止めましょう。
 というわけで、今年の初田植えは遅くなり5月5日頃になるようです。
 しかし、それこそ懸命の努力を傾注して少しでも生育を早め 一日も早く美味しい新 米を届けるように頑張ります。 秋を楽しみに待っていてください。 


NO,114 田んぼ通信 平成16・3・15

 今年も本格的な 稲作りが始まりました。3月9日には、種もみの塩水選を行いました。 例年、塩水選は、防寒着を身にまとい寒さの中の水仕事というイメージが強かったのですが、今年は幸い暖かな日に終了することができました。
塩水選が始まると 冬の間 なまっていた体がシャキットしてきます。
昨年は、10年振りの大冷害。米作りはヤーメタという声が、方々から聞こえてきそうですが今年も 例年の如く一斉に農作業が始まりました。このエネルギーはどこから来るのか 不思議に思えます。
今年の稲作りは、昨年の冷害、そして米改革のこともあり稲作農家として生き残れるか、正念場の年になりそうです。
 今年も やるべきことは、ただひとつ。
私達のお米を毎日 食べていただいている皆様から「今年のお米は、美味しいね!!」という言葉を聞きく為に 「ひたすら真面目に田んぼに通うこと」 だと信じています。
 つい最近 「いつも おコメ送ってくれるのオモカワさんだよね!ラジオで対談していたワヨ」との情報。 教えてくれれば聞いたのに 残念! というファックスをいただきました。 皆さん聞いたことありますか。NHKラジオ ラジオ深夜便! 2月29日(日)放送、サンデートークに生出演してきました。 夜中の11時10分から0時45分まで。真夜中の放送ということで殆ど 誰も聞いていないだろうということでお知らせしませんでした。後で、知ったのですが人気番組でたくさんの人が聞いていたようです。 お恥ずかしいかぎりです。 今年は、「国際コメ年」ということでコメを通した国際交流の話をしてほしいというので 東京のNHK放送センターに行ってきました。当日は、夜10時まで放送センターに来てほしいということで午後から家を出て東京へ。
アンカーマンは、明石 勇 アナンサー。生放送ということで それなりの打ち合わせをやるのかと思っていたら、ほんの軽い打ち合わせ程度のもの。勝手にしゃべってください という感じでした。テレビスタジオは、経験あるもののラジオは初めて。それも生放送。緊張するなといわれても 無理でしょう。角田の百姓仲間と10数年来やってきた事を話せばいいのだ、それ以上もそれ以下もないノダ・・・・。と腹をくくって 本番へ。
0時のニースを挟んでの後半は、要領が分かりましたので普段の角田弁丸出し、対談相手の農政ジャーナリスト大野さんと 話のプロ中のプロ 明石アンウンサーのおかげで 楽しく無事に終わることができました。 正直 疲れましたが・・・。
 ところで、今度はNHK教育テレビに出ます。小学校5年生社会科の番組。「とことん見聞録」という番組です。昨年の3月から収穫までの半年間、東京から5回以上我が家に取材に来た記録です。40分のテープ20本を15分番組にしたものだそうです。昨年は、たまたま大冷害。ディレクターの福島さんが小学5年生の姿を思い浮かべて編集したとか。
 角田の様子を皆さんにお伝えできると思います。是非 見てください。
 放送は、4/5(月)、4/8(木)、4/12(月)、4/15(木)
 いずれも、11:15~11:30 NHK教育テレビで放送です。 


NO,113 田んぼ通信 平成16・2・15

 昨日、仙台で 梅の開花宣言が出ました。 昨年より、2週間程 早いとか。
今年は、雪が少なく暖かな冬です。今年の夏の天気は、どうなることやら。
先日、隣村の諏訪神社の伝統的神事。 「筒粥目録」(つつがゆ)が届きました。 近代科学が発達した今日でも、筒粥目録を見て今年の作付け計画を立てる農家がいるほど根強いファンがいます。
私もその一人です。
 コメ作り30年。この間、スーパーコンピューターではじき出しているであろう、最先端の近代的な長期予報を見て作付け計画した覚えはありませんね。
 種モミ準備をするにあたって 頼りとするところは「筒粥目録」です。 
 筒粥神事は全国的にも珍しい特殊神事です。毎年1月15日に12本の葦(よし)の筒を粥の中に入れ、今年の天候や豊作を占います。 その様子は、いまだ 公開されておらず正しく700年余り続く神事です。 
 今年は、麦八分で豊作・豆7分で平年作。 稲作は 早生が6分で不作・中生が7分・晩生が八分で豊作。 ちなみに昨年は、早生・7分・中生6分・晩生八分でした。結果は、早生・中生は冷害の影響をまとも受けて大冷害。生育の遅れた稲や晩生の稲が低温の被害を免れマーマーの作柄でした。私は、目録の中でも中生の作柄を特に注目しています。昨年は、6分作。この作柄占いの時は、生育中期に低温がやってくる可能性が高いと考えています。そこ事もあって、昨年は春先から低温に関して警戒していました。  
 それが功してか、冷害年にしてはマズマズの収穫を確保できました。
さて、今年の目録をどう読むか。昨年のような障害型冷害の危険は、少ないと考えます。低温が早めに来るかもしれませんが、作柄に決定的な打撃を与える事はなさそうですが・・。
神のみぞ知る。 近代科学が発達した現代社会にあった、占いでコメ作りをする。なんて、前近代的な農法と笑われるかもしれません。しかし、自然界を相手のコメ作りをしていると最後は神頼みという事は、結構あります。自ずと自然の神様に真摯な気持ちになるのです。
 ところで、昨年の冷害を機に冷害対策が出されています。 早すぎる田植えが悪いのだ!
田植えを遅くしようということで、田んぼの用水開始を一週間ほど遅くするというのです。
それも、ひとつの方法でしょうが、それが全てではないはずです。
早く植えるか、遅く植えるかは、それぞれの農家の経営判断に任せるべきです。
最大の冷害対策は、「田んぼの稲に対し、責任を持った栽培管理が出来る農家を育てること。
 行政当局がやるべき事は、自らの経営判断のもとに栽培方法を決め、出来た農産物に対し自らが責任をとることのできる農業者の育成とそれを可能とする農政環境を創ることです。
 田植え時期まで、ご指定してまで おコメを作ってもらわないと、おコメが出来ないような生産地で、今年からのコメ改革の荒波は乗り越えられるのでしょうか。
今年のコメの情勢を考えれば、昨年ご迷惑をかけたぶん、他の産地より、いち早くおコメを届けたいと思っていましたので、早植えするつもりでした。
田んぼに水が来ないのでは、植えたくても植えられません。行政は、全く余計な事を考えるものです。本気で、コメを売る気があるのでしょうか。
農家をとことん自立させない農政を、いつまで続けるのでしょうか。その結果、行政のどうでもいい仕事だけが、延々と残っていく。この構図なんとかならないのでしょうかね。 


NO,112 田んぼ通信 平成16・1・13

 今年の稲作に使う種モミに、お飾りしていたオガンマツを下し、むかし苗代にしていた田んぼに持っていき鍬で数回 耕すまねをして、ワラを1把横にし、その上からオガンマツをさします。 丁度 昇ってきた朝日に向かって手を合わせ 今年の豊作を祈願しました。
 例年、雪が積もって寒い中をこの儀式をしますが、今年は風が強く寒かったものの全く雪がありません。 しかも、田んぼの土は全然 凍っていません。  正月以来、暖かな日が続いています。こんなに暖かな正月は記憶にありません。今年の天気が心配になります。
いくら科学が発達したとはいえ人間の力では、コントロールできないお天道様が相手のコメ作りです。昨年の冷害の経験を無駄にすることなく、常に最悪の条件を想定してのコメ作りは始まりました。 
一昨日は、農機具店の初売りでした。 より徹底した水管理が出来るようにアゼ塗り機を最新型のものに更新する事にしました。 大型トラクターにも対応でき、更により高精度の作業が期待できます。 冷害対策は、田植えまでが勝負です。土作り。品種構成。栽培管理技術。全てが総合的に機能してはじめて、いかなる天候にも勝てるのだと思います。
今年の心意気の一端を、今年の年賀状を紹介させていただき 新年号とさせていただきます。
        新年おめでとうございます
素晴らしい初日の出と共に、新年を迎えることが出来ました。
 今年は、いよいよ新しいコメ改革がスタートします。
私も、満50歳になりました。百姓を始めてから30年目になります。この間 私の百姓人生は、コメ生産調整農政の歴史と共に歩んできたといえます。
 コメ減反政策30年。いま日本の稲作経営に対し[夢]を語る若者は、殆どいなくなりました。
        今年は、「国際コメ年」とか。
世界的にコメの食料としての価値、コメ作りの環境保全等に果たす役割が、大きくクローズアップされることが期待できます。
しかし、足元の日本の稲作を担うべき若者が稲作経営に対して極端に魅力を失っています。この現実を直視することなく「国際コメ年」だと騒ぎ立て、一過性のイベントとして今年一年を過ごすようなことであれば日本の稲作は一気に衰退します。
この2~3年のコメ農政が、今後の日本の稲作を決めます。
少なくとも、これまでのコメ減反農政下にみられる「日本のムラ社会」の論理を利用した社会福祉政策的コメ農政からは、活力あるコメ作りは育たないことは明らかです。
 いま、日本の稲作にとって一番必要なことは、若者が自らの力を信じ「夢]を語りチャレンジ出来るコメ農政への転換です。
コメを語る評論家は少しは必要ですが、評論家だけでは、田んぼからコメは、育ちません。
 今年も、田んぼに立ちコメ作りを続ける事こそが 最大の国際貢献であり、おコメを食べていただいている皆様への最大の恩返しだと、勝手に[夢]を見ながら 田んぼに通います。
今年もよろしくお願いします。         2004年元旦