NO,135  田んぼ通信 平成17・12・15

 今年も、残すところ半月。毎年 感じることですが月日の経つのが早いですね。
今年もまた、たいへんお世話になりました。ありがとうございました。
 角田の田んぼで育ったお米を通じて、お互いの暮らしぶりがなんとなく見えてきます。
お米を通して、角田発田んぼ通信をお届けするようになって12年目を迎えました。
お付き合いが始まってから、12年が経ちます。お互いに12歳、年を重ねたことになります。 食べ盛りの子供さんがいた家庭も、成人して独立したお家の方もいるでしょう。
月に一回のお米の宅配ですが、なんとなくお互いの暮らしぶりが感じ取られるから不思議です。この12年間 一度も面識のないまま お付き合いしていただいている皆様には心から感謝いたします。本当に ありがたいことです。
 ところで、今年4月からNHKラジオ深夜便で「日本列島 暮らしのたより」のリポーターの一人として 毎月一回(第二木曜が私の担当 PM11時20分から15分程度)身近な話題をリポートしています。 深夜番組ですので 殆ど誰も聞いていないだろうから、と思い気楽に引き受けたのですが、なんと「NHKラジオ深夜便」全国放送でしかも人気番組。リスナーが全国で200万人から300万人もいると聞けば、自ずと気合が入ります。地元角田でも身近にリスナーがたくさんいました。アンカーマンはNHKを代表する超ベテランのアナウンサー。この話術に人気の秘密がありそうです。
 先日(8日)は、富山柿の話題を取り上げましたところ、方々から反響がありこちらがビックリ。私の住んでいる地域では、殆どの家庭の庭に渋柿の木が植えてあり「富山柿」と呼んでいます。秋になり冷たい乾いた風が吹き出す11月頃になると収穫し、皮を剥き日当たりの良い軒先に吊るしている光景を見かけます。約一ヶ月 乾燥させると渋柿が甘〜〜イ 干し柿が出来上がります。この「富山柿」 品種の正式名称を「はちや柿」というのだそうです。 私の住んでいる角田市は、福島県との県境、相馬地方の隣に位置します。「いわき角田」と言われたいたように生活文化圏は相馬地方との交流が盛んだったようです。 その相馬藩が今から200年以上も前、天明の大飢饉の時に、多くの餓死者がでて 農地を耕す人がいなくなった。そこで困った相馬藩では、農地を与える事を条件に富山地方の人に集団移住を呼びかけたそうです。相馬節の一説「相馬相馬と木萱もなびく、なびく木萱に花が咲く」という民謡は、集団移住を呼びかけるためのコマーシャルソングだった、とか。 当時 富山から移住してきた人が 大事に持ってきた柿の木が「はちや柿」で、いつしかこの地方では、富山から来た柿だから「とやま柿」というようになった。干し柿は やっぱり「富山柿」で作るのが一番!!
  そのような、話題を紹介させていただきました。なにしろ全国放送、あまりいい加減の話も出来ないということで、地元の先輩方に聞きとり調査をしました。その際、柿にまつわる 思い出話に結構 花が咲きました。 昔 一番寒い正月時期になるとコタツに入って 湯上りに食べたヒャッコイ(冷たい)つけ柿。舌に感じるあのビリビリした触感。うまがったナイン!  という事で、田んぼ通信同様、NHKラジオ深夜便、毎月第二木曜PM11時20分から。角田から発信しています。 来月(新年1月)は12日です。 タイ国 イサーンに正月 行って来ます。 その話をしようかなと思っています。    良いお年をお迎えください!。


NO,134  田んぼ通信 平成17・11・16

 蔵王の山々に、雪が降りました。 今年は、晩秋から初冬にかけて暖かい日々が続いています。しかし、山に雪が降ると、田んぼの空気も一変します。ピンと張りつめたヒンヤリ冷たい空気に変わるから不思議です。遅れていた里の山々の紅葉も一気に進みました。
 仕事が忙しく、紅葉狩りを楽しむ時間を持てませんでしたが、里の山々の紅葉は例年よりも くすんだ紅葉でした。 春先から賑やかだった田んぼは、人影もなく静かな空間に戻りました。農作業は、稲刈り、大豆の収穫そして大麦の種蒔き。目の回るような忙しさが続いていましたが、無事に終え 今は ホット一息ついているところです。 
 同じ耕地に、稲と麦・麦と大豆など一年に二種類の違った作物を栽培することを「二毛作」といいます。日本では、鎌倉時代から普及した伝統的な栽培方法ですが、戦後の高度経済成長期を境に 急激に減ってきました。
 田んぼに水を張って育てる稲は、毎年同じ田んぼに育てても永年 安定した収量を得ることが出来ます。しかし、畑状態で数年 同じ圃場に同じ作物だけを育てると 生育・収量共に急激に落ちます。「連作障害」といわれる現象です。稲は、田んぼに水を張る事で、連作障害を回避できます。用水に含まれている天然のミネラル分が、常に水によって補給されるからだとも言われています。あらためて 田んぼの優れた機能に感心します。 
それでは、水を張らない畑で連作障害を回避するためには どうするか。
ひとつの方法として、「二毛作」が普及してきたといえます。
特に、稲、麦等のイネ科の作物を組み合わせると効果あるといわれています。
「二毛作」は、耕地面積の狭い日本にあって、耕地の高度利用という側面も持ちますが、安定した収量を確保する為の高度な技術だといえます。我が家では、生産調整で休んでいる田んぼに 麦と大豆を栽培しています。「二毛作」です。その面積は、約9ヘクタール。
大麦の種蒔は10月下旬から11月上旬、収穫は、6月中旬。大豆の種蒔きは、麦の収穫直後6月中旬から下旬、収穫が10月下旬。 それぞれの種蒔き、収穫時期が重なり毎年同時進行で作業をしなければなりません。しかも、作物には種蒔き適期というものがあります。適期を逃すと収穫高に大きく影響します。特に、寒冷地の東北地方にあっては、その適期は短く、私の住んでいる東北南部が北限かもしれません。二毛作は、理想的栽培体系ですが、それを実行する事はたいへんです。 栽培適期の関係と天候の関係で、その時期になると超忙しい時間を過ごす事になります。 最近は、私の地域でも 実施している農家は年々減少しています。 その最大の原因は、忙しいばかり忙しく収入が上がらない、儲からない。麦と大豆の生産者価格は、年々 下がり10年前の半値になっています。
 我が家は専業農家。土を耕し立派な作物を育てる事が仕事。忙しいのは、当たり前、なんの苦にもなりません。大豆や麦など畑作物を作り続けるかぎり「二毛作」を続けます。
 今年は、天候に恵まれ大豆の刈り取り、大麦の種蒔き作業、すべて順調に終わりました。
畑では、麦が芽を出し日々 その緑を濃くしてきました。
これから数年、日本農業は激動します。
それでも 新しい年に向かって、永年続けてきた、「農」の基本的営みは始まりました。


NO,133  田んぼ通信 平成17・10・15

 お陰様で今年の稲刈りも 無事終わることが出来ました。
 最近、お天気が変ですね。
10月だというのに、蒸し暑い夏日が続いたかと思えば、本来 安定した爽やかな秋の空が続く季節だと云うのに天気が続きません。
さて今年の稲の出来は、チョッピリ期待はずれといったところです。お米の味は、自信を持ってお届けできるお米に仕上がりましたが、収量的には期待が大きかった分イマイチといった感じです。
 お米は、田んぼに賭ける百姓の思いとその年のお天気様の賜物です。 秋になりお米を収穫できたことが当たり前と感じますが、お天気様の加減次第で何時どうなるか分かりません。
無事に収穫できましたが、今年の天気も薄氷を踏む思いの連続だったといえます。
いま日本は、食生活の変化からお米の消費量が年々減っています。お米過剰の中での産地間競争が激しくなっています。 競争に勝ち抜く為のひとつの戦略として不都合な作況等 産地としてのマイナスイメージつながる情報は、できるだけ控える傾向が年々強くなってきました。
この傾向に拍車がかかれば、田んぼと消費者の皆さんの距離が益々遠くなるのではと心配になります。
お米は、自然の賜物。お天気は毎年に変わりますから、お米の出来も毎年 微妙に違います。この当たり前の事を共有できない時代は、不幸であり不自然だと思います。まして、地球環境問題が大きな地球的課題となってきている昨今です。
毎日食べるお米を通して自然のお天気様を感じる。そんな些細な日々の暮らしの積み上げからも、地球環境問題を身近なものとして捉える事が出来ると思います。
ところで今年のお米は、例年よりもお米の粒の中に白い粒のものが少し多く混じっていると感じている皆様もいるかもしれません。 もち米が混じっていると、感じている人もいるかもしれませんが もち米ではありません。   これも、立派な美味しいお米です。
専門的には、乳白米といって お米が受精して米粒になる過程(45日位)でチョットした加減で透き通ったお米にならず白いお米になるのです。原因は、少しずつ解明されてきましたが、ハッキリした原因はまだ分かっていません。 毎年 同じ肥培管理をしているのですが その年によって発生の度合いは違います。
いうなれば この白いお米もお日様からの贈り物です。お米の専門家でも、多少 乳白米が混じっているほうが お米の味が良いという人もいるほどです。現在では技術が発達して、お米の見栄えを良くするためにワザワザお米のから、白い米粒を選別する機械も出てきました。 店先に並べてあるお米の中には、白い米粒がまったくないお米も見かけますが、その殆どは、機械的に選別されたお米です。そのために余計な生産コストがかかり、その負担は生産者に重くのしかかってきています。  昨今の生産者価格の低迷は、そんなことも影響しているものと感じています。より美味しいお米を作る為に 一生懸命田んぼに通っています。昨今の お米の生産者価格は、生産コストを大きく割り込んでいます。これ以上 生産コストをかけられる状況ではありません。 御理解をいただき、お付き合いをいただければ 幸いです。


NO,132 (新米報告) 田んぼ通信 平成17・9・14

 今年たのも束の間。
9月に入り九州各地に大きな被害をもたらした 大型台風14号の上陸。
幸い私達の地域には、殆ど被害がなく通り過ぎましたが他人事ではありません。
台風は、時として大きな被害をもたらします。一年の苦労も 一夜にして無駄になることがあります。 本当にお陰様で 大きな被害を受けることなく無事 お米を届ける事が出来ました事に対し、ただただ感謝、感謝です。
 一年に一回しか収穫できないお米。昨年末の秋耕に始まり、春先の種蒔き準備等 その時々の田んぼへの想いが ぎっしり詰まっています。
飽食の時代。身近に食べ物が 溢れている現在。
店先には、常にお米が山積みされているのが 当たり前です。 
この「当たり前」の光景には、豊穣の秋を夢み 日々 田んぼに通った百姓の想いもたくさん詰まっています。
 今年一年の出来事に想い浮かべ、新米 一粒一粒 噛み締め 味わって食べて下さい。
先日のNHKラジオ深夜便でも紹介させていただきましたが、当地方には、「秋あげ半作」という諺があります。
自然界の「お空」の下にある限り 何が起こるか分からない。俵に入るまで油断できません。再び台風がやって来ないうちに、収穫作業を急ぎたいと思います。


NO,131 田んぼ通信 平成17・8・15

 残暑お見舞い申し上げます。 
お盆です。 毎年 お盆になると遠くの親戚がお墓参りに帰ってきます。
今年は、東京の叔母さん家族がお墓参りに帰ってきました。また、近くの親戚一同も墓参りにやってきて賑やかな時間を過ごします。
 私は、農家の長男。生まれた家で一生過ごします。 家を出て 故郷を想う気持ちは本当のところ分かりません。 でも、人間 戻ってくる場所があれば どんな仕事、どんなところに住んでいたとしても安心できるだろうな なんて勝手に思っています。
そんな想いもありますので、親戚一同がいつでも戻ってこれる「本家」でありたいものだと願っています。 
その為にも、真面目に働き いつでも親戚を迎えられる生活だけは維持しなければと思うのです。  数年前 ラジオで農家のお嫁さんの投書が紹介されていました。
「お盆と正月なんか 無いほうが良い。農家の嫁は、休むどころか 親戚等の接待やらでとんでもなく忙しい」  そういえば、そうなんですよね、本当に御苦労様です。 
世の中はどうあれ、我が家では毎年々 親戚一同 やってきます。 ありがたいことです。
 ところで、今年の梅雨明けは8月3日でした。 観測史上3番目の遅い梅雨明けだとか。
稲の生育は、一週間程 遅れています。 この程度の遅れは、作柄には殆ど影響ありません。
むしろ、出穂期の稲の姿は、近年になく立派に仕上がりました。 無駄な茎が出なかった為 太い茎が育ち 例年よりも大きい穂が出てきました。  殆どの田んぼで、穂が出揃い頭を垂れはじめました。 稲の花は、穂が顔を出すと同時に次々と咲いてきます。一枚の田んぼでは、咲き始めから終わるまで7日から15日かかります。毎年 出穂期になると気になることがあります。 それは、稲の香りです。 稲の花の匂いは、田んぼ所に住んでいても気付かない人がいるほど薄い香りです。 花の咲き始め、蒸し暑い夕暮れ時等に広い田んぼ全体から漂ってきます。 ご飯の香り、新米を炊いた時の香りを薄めたような香りです。 毎年、田んぼの見回りをしながら 稲の香りを体で感じ今年の豊作への期待を膨らませるのです。
不思議な事に冷害の年は、花の香りが殆どしません。
稲の花は、白い可愛い花が咲きます。花が開くと同時に、6本のオシベが外に出てきます。それぞれオシベの先端に葯(やく)と呼ばれる袋が付いています。その袋が白く見えますので、花も白く見えるのでしょう。例年、その袋の中に花粉がギッシリ詰まっています。それが冷夏で、花粉が出来る7月中下旬に低温に遭うと花粉の出来が極端に悪くなります。冷害の時も花は咲くのですが、花粉の数が少ないので匂わないのだと思われます。稲の香りは、たぶん稲の花粉の匂いなのでしょう。 
今年の稲の香りは、例年よりも ほんのり甘く爽やかな香りがしました。 地域全体が、爽やかな 甘い稲の香りに包まれました。 今年も、甘く 味わいのあるお米が出来そうです。
豊作への期待が日増しに高まります。 後は、台風の被害がないことを祈るだけです。
油断することなく、早めの刈り取り準備に取り掛かろうと思います。お盆が過ぎると、東北の秋は 駆け足でやってきます。 
追伸 8月16日昼に発生した震度6の地震の被害は、ありませんでした。御安心ください。


NO,130 田んぼ通信 平成17・7・14

  7月に入り毎日 梅雨空が続いています。7月上旬の平均湿度が なんと90パーセントだったとか。まさしく典型的な梅雨です。
田植え以来の低温の影響で、生育遅れが心配されています。6月に入り天候の回復に伴い生育は持ち直したものの、例年と比べ遅れています。
7月中旬。 例年ですと、茎の節間が伸びはじめ、稲の体の中で穂が1センチ以上に育ってます。そっと茎元を剥いてみると穂の形をした真っ白な幼穂が確認できます。しかし、今年は 産毛程に育った幼穂を漸く確認できる程度です。 我が家の田んぼでは、この10年間で最も生育が遅れているようです。毎年 7月中には 走り穂を確認できるのですが、この分では8月にならないと稲穂を見ることが出来ないかもしれません。
これから、出穂にかけて 稲の一生で一番大切な時期を迎えます。生育が遅れているとはいうものの、今年の作柄を決定するのは これから一ヶ月の天気次第です。 早く梅雨明けするのを祈るだけです。また、低温に備え田んぼの水管理をしっかりやらなければと思っています。
ところで、我が家に、キューバからお客様がホームスティーしています。キューバ国立稲作研究所で雑草管理・植物保護専門の仕事をしている ユデルさんです。キューバの主食は、コメ。その7割を輸入に頼っているので自給率を高めることが大きな目標だそうです。
今月11日から15日までJICA稲作研修員農家調査の為 角田に来ています。
今年は、野菜コース研修員も一緒に角田にやって来ました。JICAスタッフを入れて総勢
26名。外国からの研修員19名。キューバ・マラウイ・ソロモン諸島・タイ・ドミニカ共和国・アンティグア バーブーダ・ネパール・アフガニスタン・赤道ギニア・サモアの 10ヵ国。皆さん知ってますか。私は、勉強不足で初めて耳にした国がありました。
市内の11戸の農家にホームスティーしながら研修しています。
角田市には、JA青年部OBを中心に組織した「角田市アジアの農民と手をつなぐ会」という国際交流組織があります。1990年、当時のJA青年部が主催した国際稲作シンポジュームが切っ掛けとなり設立したものです。15年来、タイを中心に、交流支援活動をしています。その組織が中心となりJICA研修員の受け入れを始めてから今年で7年目。 
この間、角田にやってきた研修員総数75名。国の数は、実に32カ国。
地域別では、中東1ヵ国。中南米7ヵ国。アフリカ11ヵ国。大洋州3ヵ国。アジア10ヵ国。あらためて、7年間の数字を確認してビックリ。よくぞ、東北の片田舎角田に これだけ多くの国から来て頂いたものだと思います。ホームスティーを受け入れてくれた多くの仲間に感謝です。また、事務局をしていただいているJAや市役所の協力があってこそ続いてきたと感謝します。現在、国連加盟国は191ヵ国。私達が知らない国もたくさんあります。これからも、関係機関の協力をいただきながら、JICA研修員受け入れ事業を続けていきたいものだと考えています。
普段着の農家生活を、そのまま体験していただく事が国際協力のお手伝いになるなんて ・・・。
そう考えただけでも、楽しくなります。 しかし、これって口で言うほど簡単ではないんです。なんたって、ホストファミリー特に奥様の協力なくして継続できません。感謝。感謝。


NO,129 田んぼ通信 平成17・6・14

  5月の連休中、穏やかな天気に恵まれ順調に田植えが進みました。しかし、その後最高気温が10度という極端な低温の日が続くなど、気温の変動が激し日が続いています。
農作物全般に生育が遅れています。
 昨日、麦刈りを始めました。 昨年より一週間遅く始まりました。
我が家では、大麦を栽培しています。麦は、一雨ごとに品質が低下します。刈り取り適期になれば少しでも早く収穫しなければなりません。しかも、麦の収穫後、同じ圃場に大豆を作付けします。大豆も種蒔き適期があります。種蒔きが遅れると、収穫に影響します。作業を急がなければなりません。また、畑を耕起して ひとたび大雨が降るとしばらく畑に入れなくなります。また、除草等のタイミングが遅れると同じ作業に多くの労力が掛かったあげく、作業精度の大幅な低下を招きます。
農作業は、お天道様の下で進みます。農作業のひとつひとつが、天気とのタイミングが大切になります。人様の御都合で農業をしては仕事になりません。ひとつの作業工程が一日で終わる面積だとさほどではないのですが、栽培面積が大きくなるとそうはいきません。
農業で最も大切な情報のひとつは、天気予報だといえます。しかし、これが意外と当てにならないのです。せめて1週間の予報が正確に分かると百姓仕事はだいぶ楽になるのですが。大麦の刈り取り時期と、その直後の大豆の種蒔き。6月中旬から下旬にかけての農作業は梅雨時期と重なります。 
天気予報と自分の勘を頼りの農作業が続きます。
お天気次第では、朝早くから夜遅くまで農作業をするのは、農業の世界では当たり前の事です。自分の田んぼや畑で栽培する農作物の全ての責任は自分です。考えてみると百姓の日々の暮らしそのものが「自己責任」の世界。しかも、農作物は生き物。育った土壌、環境に正直に答えてくれます。全ては、自分に返ってきます。それが、百姓です。
 たまには、自己責任があまり伴わない世界に逃げ出したくなります。
ところで、5月下旬以来、毎日 草刈作業をしています。全ての耕作面積23ヘクタールの草刈作業を殆ど一人で作業しています。作業が終わるのに約10日間かかります。 年三回草刈作業をしますので、一年のうち約1ッ月間は草刈作業をしていることになります。 
大規模稲作経営で草刈作業を如何に 効率的に作業を進めるかが大きな課題のひとつになっています。
季節は、麦秋。西にそびえる蔵王の残雪の白。 空の青。田んぼの 緑。そして 麦畑の黄色。一年で最もきれいな田園風景が広がっています。田んぼの畦やその周辺の道端などが、きれいに草刈されている風景を、当たり前のように眺めているかもしれません。しかし、その草刈作業の殆どは、田んぼや畑を耕している農家の皆さんがしているといえます。農家からすれば、なにもボランテア作業で草刈をしているのではありません。田んぼや畑にイネや麦や大豆を栽培して入ればこそ草刈作業をするのです。
その結果 としてきれいな日本の田畑が維持されているといえます。田畑で生活している農家がいればこそ、きれいな田園風景が維持されている。毎年 草刈の時期を迎えるとそんな事を思いつつ田んぼに通うのです。


NO,128 田んぼ通信 平成17・5・16

 今年の田植え作業も、12日に無事 終わりました。
本当に当たり前のことですが、田んぼにイネを植えない限り おコメはできませんので先ずは、一安心しています。 今年の田植えは、終わってみれば極めて順調だったといえます。 ゴールデンウイーク中は、夏日もあり五月晴れの日が続き、仕事をしていても気分爽快。山野の草木には新しい命が萌え、西に連なる蔵王の山々は、真っ白な残雪。
広い真っ青な空。 そんな爽やかな気候の下での、田植え作業。稲作経営を取り巻く環境は、年々厳しさを増しますが農作業して一瞬の幸せさえ感じるひと時です。
 例年、田植え作業は 多くの親戚やその子供達が手伝いにやってきます。今年は、特にお米でお世話になっている東京調布市のお米館 山田屋本店の奥様とお嬢様が田植えの応援に来てくれました。また、新宿で居酒屋などを経営している新宿育ちの龍さんも連休中 泊りこみで田植えを手伝ってくれました。 いずれも、農作業の真っ最中。ろくな接待も出来ませんでしたが、角田の広い田んぼと爽やかな5月の景色だけは満喫していただけたと思います。 4日の日には、家族親戚子供達を合わせて総勢 20人。田植え作業は、我が家にとって最大のイベントです。
 ところで、 12日午前中 東京目黒区緑ヶ丘小学校5年生62名 生徒の皆さんと 私の地元 角田市市立 北郷小学校5年生 35名の皆さんと 合同の田植え作業がありました。これは、「あぶくま農学校」食農学習の里づくり角田農業体験学習「春」の農作業体験学習の一環として行なわれたものです。
東京目黒区緑ヶ丘小学校5年生の皆さんが 角田市の田んぼに来て 農作業の体験学習を始めてから 今年で6年になります。
「あぶくま農学校」といっても 校舎や校庭、教室はありません。私の住んでいる 角田市の広い田んぼや畑、山々など全ての角田の広い大地が校舎であり、校庭 教室なんです。
田んぼで田植えが始まる前に、北郷小学校の体育館で 「平成17年度あぶくま農学校の入学式」が行なわれました。その席上、事務局より これまで あぶくま農学校の卒業生が 目黒区の小学生が約2百名。地元の学生が2百名の合わせて 400名になると言う報告がありました。
実は、目黒区の小学校の 稲作交流事業は 今から15年ほど前から続いています。
当時は、まだ 食料管理制度が続いていました。国家管理で日本の稲作生産の全てがシステム化されていたといえます。私たち生産者は、常に受身であり、何か問題があると被害者意識的発想の下で、農政運動と称して政治的解決に任せていた時代でした。お米は、国会議員の皆様だけに食べてもらうのではない。 全ての日本人に食べていただくために田んぼに通っているのだ。当時の農政運動に大きな疑問を感じ、始まった目黒区小学校との 稲作交流事業。 10数年が経っていろんな交流の輪が広がりを見せてきました。目黒区緑ヶ丘小学校との田植えに参加し、交流事業は、「継続が大切だ!」 と言う事をあらためて感じてさせられた一時でした。


NO,127 田んぼ通信 平成17・4・16

 角田にも春がやってきました。遅れていた桜も、一昨日の雨で一斉に咲き始めました。一年で一番心が躍る季節の到来です。
今年も、稲の苗作りが始まりました。我が家では、6回に分けて種蒔き作業をします。4月3日に最初の種蒔きし、昨日、最後の種蒔きをしました。 育苗ハウスでは、緑のジュータンを敷き詰めたように順調に育っています。
一年の稲作りで、一番緊張するのが苗を育てる今の時期です。毎朝、育苗ハウスに行くと、思わず「おはようございます」と声をかけてしまいます。新しい命が芽生え、日一日と育っていきます。
朝5時過ぎ、あたりはすっかり明るくなり、東の阿武隈山地から朝日が昇ってきます。苗の葉先に出来た無数の水玉。その水玉ひとつひとつが、一斉に朝日に輝きだします。一瞬、ハウス全体が、溢れんばかりの宝石箱のようになります。
宮城角田は、東北地方でも南に位置しています。しかも、太平洋側。東北というと雪国というイメージがありますが雪は殆ど降りません。例年、春先にかけ晴天の日が続き、カラカラの乾いた天気が続きます。今年は、冬から春先にかけ、雪降りの日が多く、しかも例年と比べ気温が低かったため田んぼが乾きませんでした。
 田んぼ中心の農業をしているというと、冬は暇でしょう。何してるんですか?とよく聞かれることがあります。正月から2月頃までは、いつでも自分の自由な時間が持てます。しかし、暖かくなり田んぼが乾き始める3月になると急に忙しくなります。客土作業、ケイハン(畦)の補修。田んぼの小切り(砕土)作業等、美味しいコメ作りに欠かせない農作業が待っているからです。
それが、今年は3月末まで天気が悪く 殆ど外の田んぼ仕事が出来ませんでした。幸い、4月に入り天気が続くようになりました。百姓仕事は、お天気勝負。一度大雨が降ると田んぼに入れなくなります。この機会を逃しては、大変な事になります。この2週間余り、遅れていた田んぼ仕事をばん回するため、朝早くから夜まで懸命にトラクター仕事をしています。育苗作業、田んぼ仕事、超忙しい日々が続いています。
 ところで、皆さんNHKの「ラジオ深夜便」という番組を知ってますか。昨年、3月初めラジオ深夜便のサンデートークに出演しましたが、今度は月一回 「ラジオ深夜便」・日本列島くらしのたより で一年間レポーター役をすることになりました。
NHKからきた依頼の手紙に「一日が終わる23時台に、日本各地の16人の方々のその日の暮らしと、地域の動きを報告して頂くことにより、全国各地の暮らしぶりとそこに暮らす人々の営みを季節感豊かに描く。」という番組とありました。
東北・北海道エリアから4人です。先日14日、第一回の放送が無事終わりました。私の担当アンカーマンは、超ベテランの斉藤季夫アナウンサー。
ラジオ深夜便という月刊誌まで発行されている人気番組だそうです。昨日送られてきた「ラジオ深夜便」5月号を読んでいてビックリ。なんと、聴取者が220万人だそうです。
今年一年 田んぼ通信と共に月一回ラジオ深夜便でも 角田の様子をお伝えできそうです。
今後の放送予定は、5 / 12 ・ 6 / 9 ・ 7 / 14 のいずれも 23時20分から 10分程度 電話インタビューによる生放送です。 ぜひ聴いて下さい。


NO,126 田んぼ通信 平成17・3・14

 今年の春は、なかなかやって来ません。もう3月半ばと言うのに。ポカポカ春の陽気を感じる日が殆どないのです。ここ数日、気温も10度前後に上昇し、春をチョットだけ感じたものの それも束の間、昨日はまた雪が舞いました。 
 暦は、3月半ば。寒い々といっても、農作業は待ってはくれません。育苗に使う床土の砕土作業を終え、種もみの塩水選も終わりました。種もみの消毒作業も始まりました。
 今年は、冬から春先にかけて、近年になく雪降りの日が多く田んぼが乾きません。 例年、春先は乾いた西風が吹き、カラカラの乾いた日が続くものです。今頃の季節、盛んに田んぼに出て客土作業等をするのですが、今年はまったく出来ません。 
 さて、毎年 塩水選の作業が始まると、今年もいよいよ米づくりが始まった事を実感します。 塩水選とは、健全なモミに比べ病気や生育の悪いモミは、軽いので塩水の比重を利用してよい種モミを選別する作業をいいます。3月はじめの寒い時期の作業です。水仕事なので辛い作業ですが、この作業が始まると冬の間、緩んでいた気持ちが一気に引き締まります。 
 米づくりは、毎年同じ作業の繰り返し。季節の移り変わりと共に、農作業も進んでいきます。
     「米づくりは毎年一年生」。
 何十年も米づくりを経験した先輩がよく口にする言葉です。
毎年、春になり暦と共に農作業が始まり、同じ作業の繰り返し。これがコメ作りです。
違うのは、毎年のお天気。 毎年々 同じ作業をしていても、その思いは違います。
しかも、一年に一回しか経験できません。今年の天気に思いをよせ、お米を食べていただける、お客様の顔を思い浮かべ 米づくりは始まるのです。
 厳しい自然災害に遭っても「百姓の来年」。こんな想いが自然に湧き出てくるのは、人の力が及ばぬ お天道様がお相手だからでしょう。しかも人は、お米に限らず「食べ物」を食べないと生きていけないのです。
 今、日本のコメを取り巻く情勢は、大きく動き出しました。農業界に限らず、世の中の運営システムが大きく変わろうとしています。従来の意識では、理解しがたい事がたくさんおきてきました。しかし、いくら世の中が変わろうとも、人が生きていくという事は、意外と単純な事なのかもしれません。「食べ物を食べないと死ぬ」「生きていくために 食べ物を食べる。そして、ウンコをする」。
人が、生きていく為に最も必要な「食べ物を作る仕事」。それが、百姓。
なるほど、なるほど、百姓を続ける事が 最大の「社会貢献」。
 必要とされる限り、百姓ヤ〜〜メタは許されません。環境保全を唱え農業を続ける事も必要でしょう。しかし、それは一つの手段に過ぎません。全ての人が生きていく限り基本的な食べものつくり供給する。それが、農業者の最大の仕事でしょう。その農業者が、生きていける環境を創るのが 政治の最大の役割だと思うのですが。
私たちのお米を待っている。人がいる!
 今年も、田んぼに真面目に通い 豊穣の秋を「夢」みて コメ作りがスタートしました。


NO,125 田んぼ通信 平成17・2・15

 宮城は、ここ数日 肌寒い日が続いています。田んぼに雪はありません。
日が暮れるのが、本当に遅くなりました。 
冬至の頃は、夕方4時を過ぎると 薄暗くなったものです。それが、夕方5時半過ぎても外で仕事ができます。 
お日様の光は輝きを増し、寒い寒いといいながらも空気は春めいてきました。
 暦は、もう2月半ば。 旧暦では、まだ正月7日ですが、いつまでも、正月気分に浸ってはられません。そろそろ、本格的な農作業を始める時期が来ました。
 一昨日から 田んぼ仕事を始めました。美味いコメを作る為に欠かせないのが土作り作業です。
農作業にゆとりのある 今の時期に 毎年土作り作業をはじめます。
お米の精米作業で大量に出るコメ糠(当地方ではサグズと言います)と、昨年 秋の長雨で大量に発生したクズ大豆を 引き割りし 有機質肥料として田んぼに お返しします。 本来であれば、醗酵させ堆肥として施せば良いのですが、近年 田んぼの面積が多くなった事などで 直接散布するようになりました。 気温が低い今の時期に散布し、地温の上昇に伴い田んぼの微生物達の「食べ物」となり、稲の肥やしになれば良いと思い毎年作業をしています。
昨年、大豆の出来は最高でした。久しぶりの豊作。期待して収穫の秋を待っていたのに 秋の彼岸過から秋の長雨。お米は、心して早めの作業を心がけていたので最高の品質で、収穫できました。しかし、角田地域の大豆は、長雨の被害をまともに受けてしまいました。 幸い、我が家の大豆は、土作りと肥培管理が功を奏し 普通大豆は、一等の格付けの大豆を収穫できましたが、 納豆用のコスズは、大量のクズ大豆が発生しました。半年かけて手塩にかけて作った大豆です。 田んぼに お返しすることで美味しいお米となって 私たちに返していただこうと思っています。
 ところで、「土作りが基本」とは、誰しもが口にします。特に、冷災害が起こった時には必ず農業関係者の話題になります。しかし、近年 生産現場であまり聞かれなくなりました。 しかも、「土作り」といっても、畜産の排泄物を、堆肥と称して散布すれば良い、とう単純なものではありません。
一昨年、宮城県は大冷害でした。この総括の中で、土作りの必要性があまり強調されませんでした。 農業関係機関で強調されたのが、「遅い田植えの実施」のみ。 この状況をみて、宮城県農政関係機関の質の低下と、生産現場に目を向けようとしない試験研究機関に働く職員の低落ぶりを垣間見る思いをしたものです。
土作りは、超低金利時代の定期預金のようなものだと思っています。
毎年、続ける事で確実に力が蓄えられます。お客様の「今年のお米は 美味しいわね」という声を聞くたびに、それを実感させられる日々が多くなりました。 昨今、地球環境の悪化に伴い環境に配慮した農業が注目されています。無農薬栽培・有機農法等の言葉が盛んに躍っています。 自然環境と密接な関係にある産業、それが農業です。地球環境に配慮した農業を模索するのは、農業経営者として当然です。これが、実現出来なければ、農業者として生き残れないと思っています。しかし、無農薬栽培・有機農法をする事が、農業者の最終目標の様に思われますが、これには大きな疑問を感じています。
無農薬栽培・有機農法は、農業の一つの手段にすぎません。 
農業の目的は。人間の命の源である、「食べ物」を生み出す有用作物を栽培する事。限られた地球で、しかも、限られた優良農地で、効率よく健康な良質な作物を育てる事だと考えます。
健康な土地で育った作物は、丈夫に育ち、病気にも気象災害にも強く、余計な農薬散布も最小限で済みます。
しかも、本当に美味しい食べ物ができます。
「食べ物は、薬ではないのです。美味しく、楽しく食べる事が最も必要です」
美味いおコメを作る農法を追求することが、地球環境にも優しい農業の実践なのだと思う今日この頃です。


NO,124 田んぼ通信 平成17・1・15

 新年おめでとうございます。今年も、皆様に喜んでいただける美味しいお米を育てる為に 「真面目に」田んぼに通います。 よろしくお願いいたします。
 昨日は、恒例の 「団子さし」(粳米の粉で餅を搗き、団子に丸めて、ミズクサ、山桑等の木にさし、神棚や部屋々に飾ります)の小正月を迎える行事し 夜には(以前は、真夜中の12時前) 暁粥 を食べました。 子供の頃は、昼のうちに 〆縄、オトスナ等の正月飾りを取りはずし、一まとめして箕(み)の中にいれて置いたものに 暁粥をかけ、ヒラキ(表座敷の縁側)からだし「ヤーホイホイ」と大声で連呼しながらその年のアキの方角にある木を選んで、その木に送るという「鳥追い」の行事がありました。
最近、集落のお寺の境内でドント祭が行なわれるようになってからは、ドント祭で正月飾りを送るようになりましたので、「ヤーホイホイ」という掛け声が懐かしく感じます。
 大晦日、親父手作りの〆縄、オトスナを飾り、家族揃って神棚に手を合わせてから、例年ナメタカレイを食べて年とりをします。その後、家族揃って紅白歌合戦を観て(子供達は、格闘技かな)除夜の鐘を迎えます。
元旦は集落新年会。2日は、地域消防団の出初め式。
我が家では、正月の雑煮は「3日雑煮」といって1月3日に初めてお雑煮を食べます。元旦から世間並み雑煮を食べようかという話もありましたが、我が家の仕来り。 他所は他所ということで今でも「3日雑煮」。7日は、7草粥を食べ。11日は、「農の初め」種モミに飾っていたオガンマツを降し、田んぼ(以前は苗代)に持っていき 鍬で田んぼを数回おこし、ワラを1パ横にしその上からオガンマツをさし 今年の豊作を祈願しました。今年は、雪の降りしきる中の「農の初め」となりました。寒さの中、気持ちも背筋もシャッキットしました。本格的な農作業の始まりです。そして昨日、14日は小正月。
 毎年 特に変わった行事するわけではありません。我が家の新年は、例年通り暦に従って平穏無事に迎えることが出来ました。昨年からの国内外の大きな災害、戦争渦中にいる人々を思うとき、昔から続いている行事をごく 「当たり前」に過ごして新年を迎えられる幸せ。
「当たり前」の幸せ、そして、「当たり前」のことを続ける事の難しさを、特に身に染みて感じる年の始まりです。 
 ところで、今年は、如何なる年になるか。今年一年どの様に生きるか。
との想いで改めて元旦の新聞を・・・・・・。
「広い心」と「謙虚さ」私に必要。 「グローバルに思考し、ローカルに暮らそうじゃか」
「自分らしく生きる」 「だが、どんな時代であれ、人が生きている限りは食べなければならない。当然のこととして農業も維持されなければならない」。
こんな活字が目に留まりました。
また  「いい農作物を育てる」 
百姓はじめて31年。51歳にして「百姓は、この言葉に尽きる」と感じる今日この頃です。
 「うまいお米」を食べていただき、「幸せ」を共感し共有していただける米づくりを目指し今年も田んぼに通いますので、応援してください。