□ 「03年冷害を振り返る」 平成16・5/26
農業共済新聞

平成16年5月26日付け農業共済新聞に「03年冷害を振り返る」というテーマで原稿依頼があり掲載されましたので紹介します。 過去8回にわたり 国の試験研究機関の研究者がリレー方式で執筆し 最後に3人の生産者から農家の視点をまじえて執筆するというシリーズ記事です。


「03年冷害を振り返る」 「農家の視点と今後の対策」

宮城県角田市 面川 義明

先日(12日)無事、今年の田植えが終わりました。
代掻き作業を始めてから約2週間、昨年より5日ほど遅い田植え終了でした。
 昨年は、10年ぶりの冷害でした。特に、私の地域は作況指数49という数字が示す以上に深刻な冷害被害を受けました。
 昨年の冷害を受け関係機関による冷害検証が行なわれ、対策も検討されたようです。
宮城県では、「遅い田植え・晩期栽培」を凶作対策の第一としてあげました。
私の地域でも、田植えを遅らせるために用水開始時期を10日程遅らせる措置がとられました。指導機関からすれば、用水を止めてしまうということが「指導」の徹底という点ではベストでしょう。
しかし私は、今回の措置について大きな疑問を持っています。
田植え時期などの基本的稲作栽培技術に関しては、田んぼを耕作する個々の農家が「経営」という視点にたった「自己責任」に委ねるべきだと思います。
 新食糧法施行以来、ますます消費者の視点に基づくマーケット戦略にたったコメ生産が求められる時代です。
冷害により数量、品質の点でご迷惑をかけ、おいしいコメが極端に少なくなっている昨今のコメ情勢を考えた時、「おいしいコメを一日も早く消費者に届ける」という視点、配慮に基づいたマーケット戦略がもっとも必要です。
差別化をどのように図るかが大事で、そのことでしか付加価値を与えられなくなっているコメ生産の現状に立脚した、冷害検証及びその対策でなければコメ産地、稲作農家として生き残れないと考えます。
冷害対策として、農業指導関係機関など行政に最も求められているのは、マーケット戦略に基づいて自主的に判断し行動できる稲作経営者の育成であり、その稲作農家の行動を常に担保できる農政の環境作りです。
 ところで、H5年と昨年の冷害を経験して確信できた事は、「試験研究機関などで培われてきた冷害対策の基本技術を確実に実行することにより、冷害は克服できる」という点です。
大きな被害を受けた殆どの田んぼは、前歴深水管理や予防農薬散布など冷害対策の基本技術が不備だったといえます。「冷害は、防げる!」という認識に立った基本技術の完全実施に向けた生産者の対応が求められているといえます。
日本の稲作は、その歴史的特殊性から様々な関係機関の連携のもとに進められてきました。 旧食管法から消費者重視の新食糧法に変わった今、生産者はもちろんのこと、特に、行政をはじめとする関係機関の意識改革が最も求められていると思います。
行政がやるべき事。JAなど農業関係機関がやるべき事。コメ生産に直接携わるメーカーとしての稲作農業者のやるべき事。
昨年の冷害を機に、真のパートナーシップに基づいた、日本稲作の再構築が求められているのだという時代の流れを、強く感じながらの今年の田植えでした。