□ 自立した農業経営体による角田市農業の確立について H14・3・10

角田市農業戦略会議の資料として私がまとめたレポートです。

 平成7年の新食糧法制定以来7年の歳月が過ぎようとしています。 この間、時代は大きく変わり更に昨年の狂牛病発生を機に従来の農政手法そのものが 問われる時代になったといえます。このことは、農政そのものが「何の為に」「誰の 為に」存在するのかという根本的問題が問われているのでしょう。 従来の農政は、旧食管制度下の農政に見られるように、「国民への食糧安定供給」と いう大儀名文が何時しか「制度そのものを守る為に」「農業者及び農業関係団体を守る為に」と言わざるをえない農政が展開されてきたといえます。しかし、昨年の狂牛病問題以来の農政に求められているのは、「国民一人一人の消費者に、食物への信頼 と安定供給の為に」農政担当者、農業関係団体、そして農業者がそれぞれの立場でど のような役割を演じ、その責任をどのように果たすのか明確に説明し実行する事であ ると言えます。
 これからの角田市農業を展望し新たなる農業政策を確立する上で、この時代の流れを的確に捉え確実に対処することは益々重要になってきたと言えます。

角田市における農業の役割とその政策及び地域農地管理システムの基本的考え方
 角田市の地域作りを進める上で農業の果たしてきた役割は計り知れないものがあります。
 さらに農協等を中心とした農業関係機関の存在は、地域コミュニティーを形成する上 でも重要な役割を果たしてきました。このことは、国の農政の流れが何時しか国民不 在の農政になったのに比べ角田市における農政は、行政と農協等関係団体が一体とな り常に市政の根幹に農業を位置付けることにより市民生活により近い所で農政を展開 してきたといえます。このことは、角田市にとって大きな財産であり専業・兼業農家 を問わず農業関係者が一体となり、地域の農業及び農地を守り育てるという基本理念 に立つということは、今後角田市農政を進める上で益々重要になると思われる。 また今日、産業としての農政が叫ばれてはいるが実際には社会福祉政策的農政が殆ん どであり産業政策としての農政は数少なかったといえます。今後、「食べも物への信 頼と安定供給の為に」農業者及び農業関係団体が果たすべき役割として「国民に分か り易く農業の現場を説明する事」が重要になると思われるが、そのためには観念論と しての農業を語るだけでなく産業としての農業を追求することがより重要になると思 われます。そのことより 経営感覚に富む農業者の育成が図られ、農政の現場を合理的に整理し説明する事によ り農業への理解者を数多く育むことになります。これからの、農業を考える上で最も 大切な事は、国民の農業への理解をいかに構築するかであるといえます。 その上で、これからの角田市農政を進める上で整理する課題として次の三点が考えら れます。
第一点は、環境対策としての農政。
第二点は、農地保全対策としての農政。
第三点は、産業政策としての農政。
 今日までの農政は、これらの三つの課題をすべて農政の課題としてひとくくりに考え てきたといえます。このことが、今日までの農政がとかく観念論に終始し農政の現場 を分かりにくいものにしてき大きな要因の一つになってきたと言えます。 今後、角田市の農政を進める上で、それぞれの課題ごとに目標を明確に設定しそれに 至るためのプロセスを構築する必要があります。また、農業関係者ばかりでなく一般 市民にも分かりやすい農政を展開する上で大切になことは、農政担当者、関係機関、 農業者がそれぞれの役割を明確にし、事業ごとの責任の所在を明らかにすることであります。
 これまでの農政を進める上で「集落農業」という表現で全てを語ってきましたが、集 落を構成しているのが個々の農家であり、それぞれに規模の大小を問わず経営体であ ると言う現状認識を持つことが今後の農政を進めるうえで基本になると考えます。 今、時代が農業に求めているのはそれぞれの農家・経営体の自立した事業の展開と其 れにもとづいた責任ある行動であります。 そもそも、経営とは「術」であり「技術」がすべてであり、それに基づいた経営者の 判断で「策」を考え実行することだといわれています。また、経営とは「プロセス」 だ、「始末」だともいわれていますが、いずれにして自分の考えに基づいた自立した より多くの農業者をいかに育てる事が出来るかが今後の角田市農業の発展のカギを 担っているといえます。

三つの課題解決のためのプロセス
環境対策としての農政の展開
 主に西根地域等、中山間地の農地管理システムをどう構築するのか。
 地域作り(一般市民を巻き込んだ)の視点に基づいた農政の展開をどうするのか。 例えば、生ごみ処理などを絡めた議論の構築。

農地保全対策としての農政の展開
 今後予想される、多くの耕作放棄地対策をどのようにするか。
 単なる、農業者だけの問題として考えていいのか。環境対策としての農政との関連 付けが必要では。
 地域作りとしての新たな視点に基づいた農地管理システムの構築。

産業政策としての農政の展開
 角田市には、多くの社会資本を投下した汎用型の水田が6割を占めている。
 これらの農地は社会的責任の上でも、効率的な農業の展開が求められている。
 より効率的かつ合理的な農業が展開できる農地管理システムの構築。
 農業生産の担い手へが効率的な農業展開が出来るようなシステムづくり。

 地域農業の担い手にたいする基本的な考え方

 従来の全ての農家を対象とした農政の展開は、今日の社会情勢からしても国民の理 解を得ることは困難と言えます。
 社会的な要請からしても、規模の大小を問わず農業に対するプロセスを明らかにで きる農業者(経営者)・経営体(簿記管理が出来る協業組織も含む)がこれからの角 田の農業を担う農業者であり、其れを可能にする農業者を育てることが担い手育成の 中心政策といえます。
 角田市には汎用型の水田が6割を占めており、これらの水田をより効率的に活用し 経営として成り立つシステムの核として担い手を位置付けることが必要です。
 これからの角田市農業の担い手に求められる事は経営的感覚であり、そのための基 礎となるのは客観的な数字に基づいた分析であります。その基本となるのは、簿記です。
 このことは、従来から言われてきた事だが遅々として進まなかったと言えます。
 しかし、今日の急激な社会情勢の変化に対応するには農業界・農業者だけのいい訳 では  対応できなくなったと言えます。
 自立した農業経営体による角田市農業の新たな展開を考える時、今すぐ取り組む課 題して簿記記帳農家をより多く育成する事であります。
 その具体的政策として「青色申告農家」の育成です。
 規模の大小を問わず、青色申告農家・〔簿記管理が出来る協業組織も含む〕をこれからの育成すべき農家として位置付け農政の中心課題として政策を集中させることが 最も必要であるといえます。