□ 角田の「食」と「農」を考える緊急集会 平成14・12/9
角田市市民センター

角田からの提言  理解と納得のいく米政策の改革について

私は、現在49歳。百姓を始めて、はや30年の歳月が過ぎようとしております。
私の、米作り30年の人生は、米の減反政策に振り回された百姓人生でもありました。
本日の緊急集会にあたり、本日お集まりの諸先輩の皆さんと共に歩み、そのなかから御指導を受けました経験を基に、これからの「角田市の農業・米政策について」、現場で必死にコメ作りに携わってきた者の一人として反省の念を込め、率直な提言をさせていただきます。
本日、私からの提言はただひとつです。
「これからの食糧生産を担う20代から30代の若い農業者が、自信と誇りを持って農業の夢を語り、伸び伸びと育っていける農業環境をこの角田市から創り上げ、日本全国に発信しよう。」そして、「日本の新しい米政策改革の歴史をこの角田市から築き上げよう」という事です。
 佐藤市長さんは、常々「農業は人が生活する上で、教育、環境問題、道徳すべてにおいて基本となすべき事であり、農政は目先の利益にとらわれず百年、いや千年のスパンで考えなければならない。」と口癖の様に唱えております。
私のように農業に直接携わる百姓のみならず、本気で仕事に打ち込む農業関係者ならば、その考え方に対し心から賛同しますし、その様な政治が早く生まれることを心から願っていると思います。
それでは、その様な農業環境を実現するためにはどうするかであります。
この点が一番の大きな課題です。
皆さんもご存知の通り、平成7年。旧食管制度が廃止され、新食糧法に移行しまし
た。
それと同時に、ガットウルグアイラウンドの国内農業対策として6兆百億の巨額の税金が私たち農村に投資されました。その殆んどは、農業構造改善事業として田んぼの基盤整備事業に使われたようですが、6兆百億円もの巨額の投資は、少しでも国際競争力を身に付けた農業者の育成に、その目的があったはずです。それが、現実はどうかであります。全国的にみても稲作経営に「夢」を語る若い後継者は殆んどいません。
たぶん、日本全国の稲作農民で、知らず知らずの内に「地域のため、」「集落のため」と称して使ってしまったのでしょう。
これらの行為は、地域のコミュニティの活性化という点では多少は貢献したかもしれません。
しかしながら、今後このような予算の確保と使い方が許されるか であります。
答えは、誰しもが分かっているはずです。 これまでの農政の一番の欠点は、主語がない「集落」や「地域」といった責任の所在がはっきりしない言語を使いすぎたため、無責任な農政を繰り返し、その結果、巨額な国家投資をしたにもかかわらず、益々若い農業後継者はいなくなる。と言う国民に説明のつかない農業界の現実が生まれてしまったといえましょう。 それらを踏まえ今後角田の農業を語る時、現場の農業者、農業関係者、政治家、消費者それぞれの立場で、「主語を使って農業を語る」運動をこの角田市から始めることを提案したいのです。
「地域」「集落」がやるのではなく「俺にとって私にとっての農業」はどうなのか。を各々の立場で問いかける活動をこの角田から始める事が大切になると考えます。
この点に関しては、以前、本日基調講演をいただいた東北大学の工藤先生とも、県の農政関係の委員会で議論した経緯があります。
工藤先生からは、この曖昧さが日本の農村の特徴であり仕方がないのでは、という主旨の答えをいただきましたが、それでこれからもいいのか。それで本当に、自分の経営、ひいては地方の農村を守られるのかと言う問題です。わたしは、現在大きな疑問をいだきます。
ハチ巻締めて動員をかけ、気勢をあげ「大会」なるものを開催するものの、その結果については誰も責任をとらない。
この構図を延々と繰り返し、つい最近まで「消費者との理解を深める会合」と称してハチマキ締めて平気で大会なるものをする開催するという無神経さの現実。消費者との会話を深めるためになぜ、ハチマキ姿にならないと自己表現が出来ないのでしょうか。 これからの角田市農業を担う農業者は、経営規模の大きい、小さいは別として、農業を自分の責任として経営し、主語を持って経営を語る農業者を積極的に育成・応援すべきだと考えます。
ところで、現在角田市では農業振興公社の戦略会議を中心に新しい角田市農業への提案をしています。
時間の関係で詳しくは紹介できませんが、2点ほど具体的な提案をします。
第一点目は、今後角田市の農政を推進する上で1、産業政策としての農政。2、環境政策としての農政3、社会福祉政策としての農政。の三つの観点から問題を整理して農政の推進を図ることであります。
これまで「角田の農業」とひとくくりに論じてきましたが、皆さんもお分かりの通り、西根の中山間地農業。
角田市街地の農業。
基盤整備に多くの社会資本を投下した立派な田んぼを有する平坦部の水田農業。
と角田市農業といっても様々な条件が存在します。
角田市の約8割を占める基盤整備をした水田農業は、限りなく「産業として自立できる農業」を模索する農業経営者を中心とした農政の展開をすべきだと考えています、ただし、ここでいう自立した農業経営者とは、ただ単に規模の大きい農業者だけを言うのではなく、たとえ現在規模が小さくとも、農業を経営として捉え「責任と誇りを持った農業者」も含まれるという点です。
また、3の社会福祉政策としての農政展開の基本的考え方ですが、これは、農地を維持・管理する責任は誰かという問題でもあります。現在の農地法から言っても、地権者の責任で維持・管理すべきだという考え方を大前提にすべきでしょう。
第2点目は、農業公社に耕作を依頼された農地の借受人の選定に際しては、基本的に入札制度を導入することで競争原理を導入し、農業者自らが経営努力するシステムを構築する事によって農業・農村内部から活性化する農政の展開を図ることであります。
今月の6日 角田市農業振興公社会議室において、日本の農政史上初めてと思われる水田借り受け人の選定において、公開競争入札の開示が行われました。
今年、角田市の農業を支えてきた、大型稲作経営者が相次いで3人の仲間が他界しました。
そのうちの、一人、私の後輩であり新しい米作りに共に挑戦してきました、北郷地区の佐藤稔君の耕作地約、5ヘクタールの田んぼが農業公社へ耕作の依頼がありました。
この田んぼの借り受け人の選定に「競争入札制度」をはじめて導入したわけです。
借り受け人の選定の会議がもたれ、規模拡大を希望する会員には、農地情報に関しては、知る機会と参加する機会を公平に与えるべきだということになりました。
その取得の方法は、健全で自由な競争のルールで行われるのが最も良い方法だということになった訳です。
6日の入札の結果。心配しましたが、5人の入札に参加、3人の会員に落札してもらいました。
3人の会員は、いずれも息子さんが会社勤めを止め農業に意欲を持って取り組もうとする人たちでした。
自らが意思表示し、意欲のある農業者に今後角田の耕地を活用してもらう。
このシステムを農業者自らが創りだす。このエネルギーごそが今一番必要なことでしょう。
従来、水田農業は話し合いと称したものの、「村の論理」で殆んど話し合いのない閉鎖的な環境で進められてきたといえます。
これが、日本の稲作経営そのものを、農村・農業者自らが活力を無くすシステムを創ってきたといえましょう。
入札制度による、水田借受人の選定はまだ、始まったばかりです。多くの問題も出てくると思いますが、農業者自らが積極的に農業経営に参加できるシステムとして今後、前向きに検討されることを提案したいと思います。

本日、私に与えられた課題は、「理解と納得のいく米政策改革」ですが、誰のため、誰にとって「理解と納得いく米政策改革」なのか。
という点を、今回の発言機会えを得まして、改めて考えさせられました。
これまでの、農政運動なるものは「私たち農業者に理解と納得のいく農政改革」の視点だけで農政を論じてきたのではないかという大きな疑問と反省です。
これからの時代は、私たち農業者はもちろんの事「国民の皆様」に「理解」と「納得」していただける農政改革が求められている、それに対応すべく私たち農村・農業者は何をなすべきかが、いま問われているのでしょう。
本日、これまで「安心な農畜産物の推進について」いうテーマで私の大先輩及び同士そしてJA組織からの提案がありました。
このことは、今までの農政の流れとは明らか違う角田の百姓として、主語を持って国民の皆様に理解と納得を得るために農業者自らが宣言し行動を興したものです。
本日お集まりの農業関係機関の皆様には、角田農民の新しい時代への勇気ある挑戦に対し積極的な応援をいただきますことを心から切望し私からの提案とします。